音楽会の指導でいかに効率よく子どもの能力を引き上げるかについての実践です。
毎年、音楽会が開かれる小学校が多いと思います。またそれを楽しみにされている保護者の方も多いと思います。その一方で音楽担当に任されて、どのように指導していけばいいか全く分からない私のような教員も多いと思います。
音楽会の指導における課題としては
など様々な課題があります。
この記事では、28 歳男性ピアノを弾けず、音楽の指導に自信のない私がどのように解決していったかを克明に記録していきたいと思います。(この指導方法で 2 年間 6 年生の音楽会を成功させました!)
今回、記事のタイトルに『エンジニアリング』という言葉を入れました。様々な定義がありますが、エンジニアリングとは、新しい科学技術の開発や既存の技術の改善を通して、より住みやすい社会や便利な世の中を構築することだそうです。 限られたリソースや制限の中、エンジニアリングの手法を用いて、解決していった私の経験談を紹介します。
プログラミングはしていません。動画を作成しました。(著作権上、音源つきの動画を掲載することができません。)
音源と楽譜をつなぐ架け橋となる動画です。楽譜の練習番号と小節番号を動画で表示することで、その音源がどこの小節を再生しているのか容易に分かるようになります。繰り返しも動画を見れば一目瞭然です。
左に表示されているアルファベットが練習番号、右に表示されている数字が小節番号です。
また途中の小節から練習したいときも、音源の何分何十秒から動画にある小節番号を見ればすぐに分かります。
詳細は以下で解説します。
この方法で指導するために、必ず用意すべき物があります。
楽譜に対応した音源が必要です。パート別の音源があればなお良しです。
私の場合 ドレミファ器楽(ドレミ階名付き)の「情熱大陸」メインテーマ【ドレミ階名付き】とパート別音源 CD を購入しました。
私の場合、普段から仕事で活用している iPad に LumaFusion という動画編集ソフトを入れて動画を作ってきました。
コロナによる休校の影響で GIGA スクール構想に拍車がかかり、1 人に 1 台の ICT 端末(タブレット PC など)が配備されました。
そんなありがたい時代なのですが、 授業中に一斉にインターネットにアクセスするとスピードが大幅に低下したり、フィルタリングで見せたいサイトが見せられなかったりと少し不便に感じることもあります。
自作の Web アプリを作成する案もありましたが、あまり現実的ではありませんでした。
そのような状況では、動画を共有ドライブに保存しておき、児童それぞれがアクセスし再生するのが最適解だと考えています。 動画をイヤホンをつけながら視聴することによって、様々な音が飛び交う音楽室で児童は、自分の音に集中しながら練習に取り組むことができました。
なお、イヤホンは 100 均で一括購入し、後日集金する形で購入させていただきました。
ちなみに初めての実践のときには、メルカリで買った ANA の機内のアメニティのイヤホンを購入し、使いました。しかし児童にとってイヤホンが大きく、耳に合わず、音質も悪いので、イヤホンに関してはいまいちな結果に終わっています。
まず初めに楽譜を徹底的に読み込みます。その際楽譜に何小節あるかや、繰り返しを確認します。
次に、パート別の楽譜の全てに小節番号を降ります。動画と楽譜をつなぐ下準備が終わりました。
動画を作成していきます。動画の作成にあたり、1 番大事な事は曲の速さの確認です。
私が今回作った情熱大陸の動画の場合テンポは ♩ = 120 でした。それはつまり 四分音符 1 つが 0.5 秒で演奏される計算になります。情熱大陸の楽譜は 4 分の 4 拍子なので、1 小節に が四分音符が 4 つ入る計算です。
つまり 1 小節を演奏するのに 2 秒かかる計算です!!!(キリがよくて動画が作りやすいです。)
ここまでできれば後は簡単です。2 秒ごとに小説番号を 1 つ増やしていけばいいのです。 曲の進行に合わせて繰り返しなども考慮に入れつつ、曲の終わりまで練習番号と小説番号のフレームを追加していきましょう。
すべてのパートの動画を作成していきます。
大変かと思いきや、そんなことはありません。 一度作ってしまえば、後は音源を入れ替えるだけなので、作業は少なくて済みます。
今年作った情熱大陸の動画は 15 パートありました。
それぞれのパート別の動画につき、動画の再生速度の異なるものを 3 つ作成しました。
1 つ目が 66% 2 つ目が 75% 3 つ目が 100%です。
これにより児童は自分のスキルに応じて再生速度を選んで練習できます。
ただし注意してほしいことがあります。それは再生速度を変更する際、ピッチ(音の高さ)が変わってしまう動画編集ソフトがあることです。LumaFusion と言う動画編集ソフトの場合は、ピッチを維持する機能があるにもかかわらず、再生速度を変更するとピッチが変わってしまうことがあります。
なので私の場合は 100%の動画だけを LumaFusion という動画編集ソフトで作成し、スピード変更するときには別のソフトを使いました。(私の場合は Apple 純正の iMovie と言うソフトを使用しました。)
もしパート別の音源が 15 個あった場合、且つそれぞれの動画の速さを 3 段階に分けて作った場合
15 × 3 = 45
つまり 45 個もの動画を作成することに途方もないように感じます。しかし効果は絶大です。先行投資と思って頑張りました。 すべての動画を書き出す作業は 1 日から 2 日かかることがあります。夏休み中の作業をお勧めします。
児童は自立して練習に取り組めるようになりました。もし楽譜を見てもどのように演奏すればいいのかわからない場合、動画を確認すれば良いからです。動画を確認する時も、楽譜の練習番号や小節番号を確認するだけで、音源のどこに対応しているか一目でわかります。
ほとんどの子が自立して練習できるので、教員は本当に音楽が苦手な子をサポートすることができます。
それにより全体のレベルを、1 人で動画なしで指導するときより、 短時間で高レベルに引き上げることができます。
音楽界の練習は個人練習だけではありません。みんなで合奏練習する際、序盤は音源をかけながら合奏することが多いです。(自転車の補助輪のようなイメージで、児童のスキルを補ってくれます。)
その際、練習記号や、小節番号を介して、動画と楽譜がリンクしているので、途中の小節からの練習も容易になります。
今回はプログラミングによる作品ではなく、少し趣向の変わった作品になります。エンジニアリングの考えを生かして課題解決するした経験は Web アプリを開発したときに、得た経験と遜色ないと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
もし質問等ございましたら、ポートフォリオサイトのコンタクトから連絡をください。
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